文章教育コラム

学校推薦型選抜と総合型選抜の面接

 近年大学入試の多様化に伴い、面接試験を取り入れる入試が増えている。年内入試と呼ばれ、人気を集めている学校推薦型選抜(以下「推薦型」)と総合型選抜(以下「総合型」)には多くの場合に面接試験が行われる。実は推薦型と総合型の面接には違いがある。いずれかの選抜方式で受験する人はその違いを押さえておこう。

学校推薦型選抜と総合型選抜の面接

面接時間の長さは作成する出願書類の分量に比例する

多くの場合、推薦型の面接時間は短い。10分程度で終わるものが多い。対して総合型の面接時間は長い。30分程度の長丁場になる場合が多い。面接時間の長短は、自ら作成する出願書類の分量と比例する。実はここに重要な意味が込められている。

面接では出願時に提出した書類の中身を質問される。ストレートに書類の中身に触れなくても志望理由書などの提出書類を読んだうえで、どういった質問をしようかと大学の先生は考える。出願時に提出した書類は、大学の先生が各受験生への面接の質問を考える「台本」の役割を果たしているのだ。台本が短ければ面接も短くなる。台本にボリュームがあればたっぷり時間をかけて行われる。そのようなわけで、推薦型の面接は短く、総合型の面接は長い。

「ふるい落とし」と「選び出し」

推薦型や総合型で面接試験が多く行われる理由は、各大学・学部・学科の求める学生像とのマッチングを確かめるためだ。ミスマッチの受験生をふるい落とし、マッチしていて、かつ、優れた資質や強い意欲を持っている受験生を選び出すために行われる。つまり、面接のねらいは「ふるい落とし」と「選び出し」にある。

推薦型の面接は「ふるい落とし」に比重を置く場合が多い。意欲に乏しく、ミスマッチな受験生をふるい落とす。審査のポイントがシンプルなので、面接時間は短い。一方、総合型の面接は「ふるい落とし」よりも、優れた一面を持つ受験生の「選び出し」に比重を置く場合が多い。意欲と適性の有無をみるだけでなく、それぞれの受験生のオンリーワンの魅力を見出そうとする。だからこそ複数の書類作成を課すとともに長い時間をかけた面接を実施する。

なお、競争率の高い人気大学では、推薦型であっても「選び出し」をねらいとする場合もあるが、大抵は次の定義があてはまる。

  • 学校推薦型選抜の面接は、時間が短い。選抜のねらいは「ふるい落とし」といえる。
  • 総合型選抜の面接は、時間が長い。選抜のねらいは「選び出し」といえる。

両選抜方式の面接対策をとるには、まずこの点を念頭に置こう。

学校推薦型選抜の面接対策 ―短い面接の攻略法―

推薦型の面接対策では、「ふるい落とし」にあわないように、最低限、次の対策は行おう。

二大メッセージに関する回答は念入りに準備する

志望理由、セールスポイントの二大メッセージに関する質問は、質問の仕方を変えたり、条件を加えたりして様々な角度からの質問を用意し、回答を考える。

全ての出願書類について、その中身を説明できるようにする

志望理由書などの自分で書いた書類、調査書などの他人に作成してもらった書類、賞状などの特定分野に優れた証などに対し、聞かれそうなことを予測し、回答を考える

大学から予告されている内容は確実に回答できるようにする

募集要項などの大学公式資料に書かれている出題内容、オープンキャンパスでの情報から出題可能性のある質問、総合の面接でうまく答えられなかった質問などの回答を確実に準備する。

総合型選抜の面接対策 ―長い面接の攻略法―

総合型の面接対策では、「選び出し」の対象者となれるように、回答力の向上を図る必要がある。そのためにフル活用してほしいのが出願書類だ。出願書類を用いて、次の対策をとることを勧めたい。

自分軸の強化を図る

セールスポイントは「過去から現在までに培った自分」、志望理由は「現在から未来に向かう自分」。この2つを結び付けて、自分という人間の軸を作るイメージを持つ。

プレゼン力をつける

出願書類に全体像を把握する。そのためには、あらまし(大体何を書いたか)と訴えどころを(言いたいこと)をまとめる。
 出願書類にプラスアルファの魅力を加える盛り付けをする。盛り付けの方法には「ストーリー」「その後の調査結果」「注釈」の3つがある。

対話力をつける

出願書類に書いたメインテーマの良し悪しを親や先生など年上の信頼できる助言者と対話し、書類内容の深掘りする
 出願書類に書いたメインテーマとは異なる主張について助言者と対話し、多様なものの見方を身に付ける

学校推薦型選抜と総合型選抜の面接対策のさらに詳しい解説は『総合・推薦入試 面接で逆転合格』(和田圭史著・Gakken)を参照してほしい。

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