文章教育コラム

ホットな話題を小論文的に考える

ホットな話題を小論文的に考える

小論文は、今の世の中を深く、そして冷静に考えるための有効な手段と言ってもよい。

新聞やテレビのニュース番組、インターネットのニュース記事などを読むと、国内、国外を問わず毎日さまざまな社会の問題を目にする。ホットな話題から気になるテーマを1つ選び、是非を問う問題を提起する。その問題に対し、賛成・反対両方の立場から、なぜ賛成か、なぜ反対か、その理由を考え、メモをとる。できればメモにしたがい、小論文を書くほうがよいが、メモを取るだけでも、小論文的思考を育てるトレーニングになる。さらには、小論文の勉強に役立つだけでなく、世の中のさまざまな問題に対し、自分の意見を持てるようになる。そうすることで情報への向き合い方も変わる。偽情報や扇動的な言動に惑わされることなく、自分なりの見解を持つことができるようになるだろう。

最近の話題から、2つのテーマを取り上げて、それぞれに対する賛否のメモを紹介したい。

「米の自由化」について、賛否を考える

しばらく前から、米の値上げ、米不足、備蓄米の販売などが報道されている。学校でも家庭でもこれらのことが少なからず話題になったことだろう。中学生や高校生はもちろんのこと小学生でさえも身近に感じているはずだ。米の自由化の問題は、日本のあり方、これからの方向性にかかわる大きな問題である。そこで、この機会に、米の自由化に対し、賛成・反対のそれぞれの立場に立って、なぜ賛成なのか、反対なのか、その理由を考えてみよう。

自由化に賛成の理由

  • 自由化すれば、消費者は輸入米などの安い米が食べられるようになる。消費者は物価高に苦しみ、少しでも安い米を求めている。消費者が日本人の大多数なのだから、人によって外国の安い米や日本産のおいしいブランド米を選べるようにするべきだ。
  • 日本は米農家を守るため、外国からの米に高い関税をかけるなどして、米の輸入を制限している。そのために、外国から圧力をかけられて、日本の車などの工業製品に高い関税をかけられている。グローバル社会なのだから、関税などはできるだけなくして、自由に輸入できるようにするべきだ。国別の食糧自給率にこだわるよりは、世界全体で様々な分野の生産物を輸入しあう状況を作るべきだ。

自由化に反対の理由

  • 自由化すると、もっと大規模農業の盛んな国や労働力の安い国で生産した米が入って日本の米農家が成り立たなくなる。米農家を守って食料自給率を高めておかないと、国を守ることができない。戦争や災害などが起こったとき、自給できないと他国から輸入できなくなって、日本人は飢えてしまったり、外国に依存したりしてしまう。
  • 米の生産や流通を自由化すると、米が不足したり余ったり、値段が高くなりすぎたり、安くなりすぎたりする。そうなると、農家が成り立たなくなったり、国民が今以上に米を適正な値段で買えなくなったりする。食料の基本である米については政府が管理して農業と国民の健康を守る必要がある。

「熊の殺処分」について、賛否を考える

ここ数年、たびたび熊が人の住む場所に出没し人間に被害を与えている。そのような場合、危険な熊を殺処分することが多いが、これに対して抗議する人もいる。

熊の殺処分問題は、動物と人間の共生にかかわるテーマだ。自然保護、動物愛護の観点からはもちろんできるだけ殺処分をするべきではないが、人の生命や財産を第一に考える必要もある。熊の殺処分について、賛成・反対のそれぞれの立場に立って、なぜ賛成なのか、反対なのか、その理由を考えてみよう。

殺処分に賛成の理由

  • 人里に来て、人間の食べ残しなどの食べ物を知った熊はこれからも人里に現れて、出会った人を襲うようになる。また、熊が畑を荒らすなどして、人が生活できなくなっている。人間の命と財産を守るために殺処分するしかない。
  • 自然保護や動物愛護はあくまでも、人間の生命と生活を守ったうえでのことである。できるだけ動物との共生を重視するにしても、それがくずれて人間の生命、生活が脅かされたら、動物を殺す必要がある。

殺処分に反対の理由

  • 熊は、自然を破壊され、食べ物がなくなったために、人間の住むところに食べ物を探してきている。それを人間の都合で殺すべきではない。自然は人間のためだけのものではない。熊が住みやすくて、人間に危険のないところに返す方法を探るべきだ。
  • 人間は野生動物の命を最大限大事にしなければならない。そうしてこそ、自然を守ることができる。殺処分にすることは、命を軽視し、自然を軽視し、人間と自然の共生を否定することにつながる。
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